2021年、熊本の中学入試最前線
コロナ禍の2020年度を振り返って
2020年度はまさに特別な1年でした。昨年2月末に発出された初の緊急事態宣言とそれに伴う小中学校の全国一斉休校。約3か月に及んだ休校期間では、オンラインによる新たな学習の取り組みが注目されました。6月の授業再開後も、大規模なイベント自粛要請が続く中、体育祭や修学旅行などの校内行事や、中体連や吹奏楽コンクールといったイベントも、その多くが中止となりました。例年、夏休みには私立、県立を問わず多くの中学・高校で学校説明会やオープンスクールが行われ、受験生やその保護者の方が足を運び、最終的な受験校を決める際の参考とされています。しかし、昨年は多くの学校で中止や規模の縮小が相次ぎ、結果的に、入試日に初めてその学校内に足を踏み入れたという受験生も少なくなかったようです。進学実績やコースの特色など、数字や文字で客観的に伝わる情報もありますが、いわゆる「自分に合っている」「自分には合わない」といった主観的なものは、実際にそこに行ってみなければわかりません。厳しいイメージを持っていた学校でも、実際に行ってみたら、思っていたより明るく楽しい雰囲気だったというのはよくあることです。
今年3月9日、10日に行われた公立高校後期選抜試験では、前年より100名近く受検生が増える高校があった半面、逆に100名近く減った高校もありました。また、商業や工業などの実業系の高校のほとんどで、受検者数が前年より減る結果となりました。ここ数年、公立高校を受検する生徒の割合が減ってきているのは事実なのですが、今年はそれが一気に進んだ感じです。今年の公立高校入試において、受検者数が募集定員を上回ったのはわずか11校で、うち9校は熊本市内、熊本市外で定員を満たしたのは八代高校と翔陽高校の2校のみという結果となりました。
また、今年1月には、大学入試改革の目玉の1つである『大学入学共通テスト』が初めて実施されました。英語の試験では、問題がリーディングとリスニングの2つとなり、配点もそれぞれ100点ずつとなるなど、昨年までのセンター試験から大きく変わりました。以前、話題となった民間の英語4技能検定や記述式問題については、受検機会や採点の公平性などの観点から導入は見送られましたが、大学入試制度改革はまだ始まったばかりです。今年中3となる皆さんが大学受験を迎える2025年度入試では、記述式問題を始めとした新たな取り組みが導入さると予想されています。
春、それは中学受験のスタート!
4月から始まる新年度。小学6年生となる子どもたちにとっては、小学校生活最後の年となると同時に、来年の中学進学を考える年になります。小学校の同級生と同じ、地元の公立中学校に通うのか、それとも中学受験を目指すのか。当然、受験をするなら早めに準備に取り掛かった方が良いのですが、子どもたちにとっても、目指すべき目標がはっきりしていなければ、「きつい」思いをするだけになってしまいます。中学受験は「親子で取り組むもの」とよく言われます。将来的な大学進学を視野に、場合によっては中高6年間通う学校を決めるには、本人の性格や特性、得手・不得手といった「個性」を、いちばん間近で見られている保護者の助言とサポートが不可欠だからです。特に小学生の子どもたちではまだ見えている世界も限られていて、職業も学校も知らないことが数多くあります。世の中には様々な分野で活躍する人たちがいて、どうすればその職業に就けるのか。そうしたほんのちょっとした情報が、子どもたちのやる気を引き出すことにつながる場合もあります。新学年のスタートであるこの時期、まず親子で話してみることをお勧めします。
熊本の中学受験
さて、本題である熊本の中学受験についてお話ししましょう。「少子化」が言われて久しい昨今、熊本県も例外ではなく、小学校の卒業生数は年々減少しています。下の表にもある通り、一時的な増加はあるにせよ、2020年からの5年間で熊本県内の小学校卒業者数はおよそ500人減少することになります。
◎熊本県内の小6児童数の推移 | ||
年度 | 小6児童数 | 前年比 |
2020年度 | 16,364人 | -272人 |
2021年度 | 16,296人 | -82人 |
2022年度 | 16,401人 | +108人 |
2023年度 | 16,204人 | -193人 |
2024年度 | 15,851人 | -341人 |
この少子化の影響もあり、先ほども述べたように、熊本県内の多くの公立高校では定員割れの状況が起きています。しかし、熊本高校や済々黌高校を始めとした人気校の競争率は依然として高く、特に近年最も人気が高い第一高校では後期選抜の出願倍率が1.95倍と、2倍近い高倍率となりました。競争率1.3倍~1.8倍程度の高い競争率を維持している高校と、定員割れを起こしている高校という2極化が進んでいるのです。これは大学入試でも言えることで、少子化が進む中でも、国立大学や難関私立大学の競争率は相変わらず高いままとなっています。では、中学受験に関してはどうかというと、今のところ県内における中学受験者数全体が大きく減るといったような兆候は見られません。その理由を一言で説明することはできませんが、英語を中心とした大学入試制度改革が進む中、中学校から備えたいという考えを持たれている家庭は多いと思います。将来の高校、大学進学まで視野に入れた上で、どの中学校に進むことが子どもの将来を拓くことにつながるか、そうした考えから中学受験を決められている家庭が増えてきているのかもしれません。
ひと言で中学受験と言っても、中学校ごとに様々な特色があり、入試問題や選抜方法、進学後の授業の進み方や将来の進路などが異なってきます。皆さんご存知の「国立」「県立」「私立」という分け方もその一つなのですが、ここではもう一つ大事な観点、「学習内容と将来の進路」についてお話ししたいと思います。現在、小学6年生のみなさんが来春受験すると考えた場合、熊本県内には現在、国立1校、県立3校、私立8校の、いわゆる「中学受験」を経て入学が認められる中学校があります。下の表を見てみましょう。
◎熊本県内の国県私立中学校
学校名 | 2021年度定員 | 高校進学時の他高校受験について |
熊大附属中 | 160名 | 附属高校はないため、全員が高校を受験する。 |
県立宇土中 | 80名 | 基本的に中高一貫のカリキュラムで、他校受験は厳しい。 |
県立八代中 | 80名 | 基本的に中高一貫のカリキュラムで、他校受験は厳しい。 |
県立玉名高校附属中 | 80名 | 基本的に中高一貫のカリキュラムで、他校受験は厳しい。 |
九州学院中 | 115名 | 内部進学もあるが、他校受験も認める。 |
信愛女学院中 | 80名 | 内部進学もあるが、他校受験も認める。 |
真和中 | 80名 | 原則として、他校受験は認めない。 |
ルーテル学院中 | 80名 | 内部進学もあるが、他校受験も認める。 |
マリスト学園中 | 80名 | 基本的に中高一貫のカリキュラムで、他校受験は厳しい。 |
尚絅中 | 80名 | 基本的に中高一貫のカリキュラムで、他校受験は厳しい。 |
文徳中 | 40名 | 基本的に中高一貫のカリキュラムで、他校受験は厳しい。 |
学園大付属中 | 80名 | 基本的に中高一貫のカリキュラムで、他校受験は厳しい。 |
上記12校の中で、熊大附属中を除く11校が併設の高校を持っています。しかし、中学から高校への進学に関しては、11校の中でも対応が異なります。他の高校を受験する場合、併設高校への内部進学の権利を失うという学校もあれば、受験対策も含めた指導を行うという学校もあります。基本的に『中高一貫』の授業カリキュラム(中学3年時に、高校内容に入る)を組んでいるところは、大学受験に向けた6か年の計画を組んでいるため、それを断ち切ることになる他校受験は認めないとしているところが多いようです。逆に、他校受験を認めている中学校の中には、熊高や済々黌といった県内の公立TOP校に10名以上の合格を出しているところもあります。また,県立中についても、全員が中学から高校に内部進学するわけではなく、若干名が他高校を受験、進学しているようです。(※ここに掲載していませんが、熊本市が、市立必由館高校において、中高一貫教育を行う中学校の新設を目指していることが公表されました。まだ方針の段階ですが、予定通りに行けば2年後の開校ということになります。)
こうして考えてみると、どの中学校を受験するかを決める際には、高校をどうするかまで考えておく必要があるということがわかると思います。せっかく中高一貫校に合格、進学しても、高校は違うところに行くために途中で辞めるというのはもったいないと思いませんか?
親子でする中学受験
中学受験に関心がある方で、「将来の大学受験には全く関心がない」という人はまずいないと思います。将来の「大学進学」という目標からすれば、中学・高校というのは通過点に過ぎないのかもしれませんが、『将来の目標に向けて、意欲的に取り組む6年間』と『特に目標のないまま過ごす6年間』では、埋めることができない大きな差が生まれるはずです。冒頭でも述べた通り、「中学受験は親子でするもの」なのです。親の希望や子どもの好みで決めるのではなく、親子でしっかりと話し合い、実際に目で見て、肌で感じてみて、『本当に行きたい』『本当に行かせたい』と思う学校を選びたいものです。
これから中学受験を考えるみなさんには、受験する中学校を決めるまでに、次の3つのことをお勧めします。
①まず、学校の指導方針、進路状況についての情報を集めること。
➁中学校の先生や在学生と、直接話をして、疑問点や不安な部分を解決すること。
③体験入学や説明会など、実際に学校に足を運んでみて、その雰囲気を肌で感じてみること。
せっかく受験して進学した学校でも、合格した時点で燃え尽きてしまっては意味がありません。入学後に「よ~し! これからがんばるぞ!」と思える学校にこそ、わざわざ行く意味があるというものです。
熊本ゼミナールでは、そうしたきっかけの一つとして、4月18日(日)、グランメッセ熊本において「中学受験合同説明会」を開催します。熊本市内の全私立中学8校と県立玉名高校附属中学校、県立宇土中学校の計10校の先生方から、直接学校ごとの方針や特色について説明していただく形式で、気になる複数の学校の説明を比較しながら聞くこともできます。熊ゼミの塾生でない方でも、無料で参加していただけますので、中学受験に興味をお持ちの方は、お気軽にお申し込みください。お子様が、相思相愛の学校と巡り合うきっかけの一つとなれば幸いです。