変わる共通テストと高校入試
8月の新型コロナウイルス感染症の感染急拡大で、分散登校という形で始まった夏休み明けの中学校の授業。全国的な感染者数も何とか落ち着いてきて、やっと日々の学校生活が戻りつつあります。熊本市内を中心に、分散登校期間中にテストが行われた学校も多く、中学生の皆さんにとっては、落ち着かない中でのテスト受験となったかもしれません。
さて、今回の熊ゼミNEWSでは、今、中学3年生の皆さんにとって、もっとも気になるであろう『共通テスト』と、来春の本番『高校入試』について考えてみたいと思います。
志望校合格への第一関門『共通テスト』
そもそも『共通テスト』とは、県内の中学校の先生方でつくられている「県中学校共通テスト実施協議会」が問題を作成し、一部の中高一貫校を除く、県内のほぼすべての中学3年生(昨年は約15,000人)が受験するテストです。例年、中学1・2年生の範囲から出題される9月の第1回、さらに中学3年生の範囲が加わる11月の第2回と、年2回実施されてきました。昨年、春先の約3か月にわたる一斉休校の影響を受け、11月の1回のみの実施となったのですが、今年度から完全に「11月の年1回のみの実施」という流れに決まったようです。中学校ごとに実施される定期テスト(実力テストや中間・期末テストなど)では母体数が少なく、年ごとの成績の差もあるため、他の中学校の生徒たちとの競争となる高校入試に対しては、適正な進路指導が難しいところがあります。県内でほとんどの中3生が受験する共通テストであれば、中学校内の成績はもちろん、熊本市内や県全体での順位もわかり、公立高校を第一志望とする生徒が多い熊本の入試では、非常に重要なテストだと言えます。このため、中高一貫指導を行っている一部の私立中学校を除き、この『共通テスト』の結果をもとに12月ごろに行われる三者面談で受験校を決定するというのが、基本的な流れになっています。実際には、合否の決定には内申点などほかの要素も関係してきますが、まず、この『共通テスト』で合格圏に届く(少なくともそれに近い)得点をとることが、志望校合格に向けた第一関門だと言えます。では、昨年の11月に実施された『共通テスト』の熊本市内の中学校平均〔熊ゼミ集計値〕から見てみましょう。ただし、昨年の『共通テスト』は、一斉休校による学習進度の遅れに配慮し、中学1・2年生範囲中心で実施されたため、今年とは若干異なる点に気を付けてください。
国語 | 社会 | 数学 | 理科 | 英語 | 合計 | |
平均点 | 25.5 | 25.5 | 23 | 27 | 24 | 125 |
例年、『共通テスト』の5教科合計の平均は125点前後で、公立高校の入試(後期選抜)において難易度が高いとされる、国語・数学・英語がやや難しめになっているというのが近年の傾向です。数学・英語では読解力、思考力を問う出題が多く、国語では難易度が高い論述式、記述式の問題が増えているというのが近年の傾向です。また、理科・社会では両解(2つ以上の設問にすべて正解すること)問題が多く、知識事項に関する問題であっても、抜けがないようしっかり定着させておかなければ得点しにくくなっています。夏休み前に「共通プレテスト」のような形で、過去の共通テスト問題によるテストを実施した中学校も少なくないようですし、中学3年生の皆さんの中には、夏休みの間に塾の夏期講習などに参加し、特に中学1・2年生範囲の復習に力を入れたという人も多いと思います。ただ、9月、10月と中学3年生の勉強と並行して、バランスよく勉強を継続していかなければ、せっかくの勉強の効果も色あせてしまいます。苦手な教科、単元を中心に、日々の学習の時間の中に練習する時間を計画的に入れていくことが大切です。中学校で受けた『共通テスト』の過去問や、模試を受験したのであればその答案・成績資料を見直し、しっかりと自分の弱点と克服すべき課題を明確にして取り組んでください。
変わる高校入試
それでは、昨年の『共通テスト』結果をもとにした、主な公立高校、国立高専の合格予想ラインについて見てみましょう。(※得点は合格可能性60%のライン)
学校名 | 学科/コース | 得点 |
熊本高校 | 普通科 | 206点 |
済々黌高校 | 普通科 | 184点 |
第一高校 | 普通科 | 161点 |
第二高校 | 普通科 | 170点 |
熊本北高校 | 普通科 | 139点 |
東稜高校 | 普通科普通コース | 112点 |
必由館高校 | 普通科 | 121点 |
熊本商業高校 | 商業科 | 125点 |
熊本工業高校 | 全科 | 116点 |
宇土高校 | 普通科 | 98点 |
玉名高校 | 普通科 | 107点 |
八代高校 | 普通科 | 112点 |
国立熊本高専 | 熊本キャンパス | 166点 |
八代キャンパス | 157点 |
昨年実施された『共通テスト』をもとにしたデータですので、あくまでも「参考」と考えてください。中学3年生の皆さんが目標を立てる上では、「得点」の目標というのが一番わかりやすいと思います。もちろん、上記の得点に届いていないから合格の可能性がないというわけではありませんし、実際、高校入試本番までは2か月以上、公立高校の後期選抜までは3か月半ぐらい間が空くわけですから、良くも悪くも「逆転」することがありえます。
では、ここで来年の高校入試日程についてお話ししましょう。もっとも大きな変更点は、「公立高校入試が早まった」ことです。これまで2月1日ごろに実施されていた『公立高校前期選抜試験』が1月24日と約1週間早まり、3月上旬に実施されていた『公立高校後期選抜試験』に至っては2月24・25日と2週間近くも早まったのです。下の表を見てみましょう。
学校区分 | 入試関連日程 |
公立高校 | ◎前期選抜入試
【出願期間】2022年1月13日~1月17日 【試験日】 2022年1月24日 【内定通知】2022年1月31日 |
◎後期選抜入試
【出願期間】2022年2月1日~2月4日 【出願変更】2022年2月7日~2月10日 【試験日】 2022年2月24日・25日 【合格発表】2022年3月7日 |
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私立高校 | ◎奨学生・専願生入試
【出願期間】2022年1月11日~1月17日 【試験日】 2022年1月19日 【合格発表】2022年1月21日~26日 ※秀岳館・専大玉名高校は、1月14日入試 |
◎一般生入試
【出願期間】2022年2月3日~2月16日 【試験日】 2022年2月15日または2月16日 【合格発表】2022年2月17日~22日 ※有明高校は1月14日、玉名女子高校は1月17日、専大玉名高校は1月28日、城北・菊池女子高校は2月2日が入試日 |
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国立高専 | ◎推薦入試
【出願期間】2022年1月6日~1月12日 【試験日】 2022年1月22日 【合格発表】2022年1月28日 |
◎学力試験(一般入試)
【出願期間】2022年1月29日~2月5日 【試験日】 2022年2月13日 【合格発表】2022年2月18日 |
実際には、上の表以外にも二次募集や追試の日程がありますが、今回は大部分の受験生が関係する上記の入試について考えたいと思います。
私立高校は、学校によって入試区分や出願期間、入試日等が異なるため、必ずその学校の入試要項等で確認してください。最近は、学校のホームページに募集要項等を掲載しているところも多いので、まずホームページを見てみるといいでしょう。さて、来年度の入試日程の特徴は、公立高校と出願期間・入試日と大部分の私立高校の出願期間等が重なっているところです。中学3年生の受験生の皆さんにかかわる部分だけ分かりやすく言うと、次のようになります。
①「私立高校の奨学生・専願生入試」と「公立高校前期選抜入試」は出願期間が重なるため、遅くとも冬休みが終わるまでには受験校を決定しなければならない。
②「私立高校の一般生入試」と「公立高校後期選抜入試」の受験校は出願期間が重なるため、遅くとも1月末までには受験校を決定しなければならない。
公立高校の前期選抜については、県立高校の普通科普通コースでは実施されないため、商業・工業などの実業系学科や理数科・英語コースなどをもつ普通科高校が対象となるため、受験生全員に関係するわけではありません。また、私立高校の専願生入試、公立高校の前期選抜入試、国立高専の推薦入試は、基本的に合格時には入学することを前提に受験するため、合格が決まった時点でその後の受験は原則として辞退するということになります。最も多くの受験生の皆さんに影響があると考えられるのは、「私立高校の一般生入試の結果を見て、公立高校後期選抜の出願変更をすることができない」ということでしょう。こういう言い方をすると、何か大きなマイナスの様に聞こえてしまうかもしれませんが、要するに受験校の候補がいくつかあるにしても、冬休みに入るまでには第一志望、第二志望の2つぐらいに絞り込み、本命の第一志望校を中心に、併願校も含めた入試のスケジュールを考え、冬休み以降の勉強の計画を考えようということです。
『共通テスト』後の11月下旬には、この『熊ゼミNEWS』でその結果と高校ごとの合格ラインについて、またお伝えしたいと思います。
受験校決定の基準は
ちょっと早いという人もいるかもしれませんが、『共通テスト』後の受験校決定も含めた心構えについても話しておきましょう。第一志望校への合格に向けてがんばるとしても、併願校などは少しずつ絞り込んでおいた方がよいでしょう。公立高校が第一志望の場合、私立高校を併願するのが一般的ですが、どちらも合格の可能性が50%では受験する際のプレッシャーは相当大きくなり、精神的にもきつくなってしまいます。一方で、「私立高校は滑り止めだから、確実に合格できるならどこでもいい」という人もいますが、これもあまりお勧めできません。「私立高校だったら、ぜひここに行きたい」という高校がある場合は別として、併願校を考える際には、次の2つのことを選択の基準に加えてください。
①高校卒業後の進路が、自分の望む進路にあっているか。
②自分が望む進路に向け、学力や資格を身につけられる学科・コースがあるか。
これらは、公立高校も含めたすべての受験校を決める際に大切なことです。将来、大学進学を志しているのであれば、公立も私立も「大学受験・進学にプラスになる学校・学科」を第一に検討したほうがよいでしょうし、商業や工業といった実業系が第一志望の場合、私立高校も同様な実業系の学科・コースをもつ高校にするか、高校卒業後の大学・専門学校進学も視野に入れて普通科にするか、先の先まで含めて考えてみた方がよいでしょう。もちろん、最終的には成績や通学距離、学費といった面も含めて決めることになりますが、どの高校に進もうと3年後には次の進路が待っています。ひとつ先の進路も含めて考えることで、高校の3年間がもつ意味もきっと変わってくるはずです。
長々と書いてきましたが、それもこれも皆さんの『共通テスト』結果次第で変わってきます。まずは、納得のいく最高の結果を残し、第一志望校を受験校とするため、これからの約1か月間を上手に使ってください。