【熊ゼミNEWS】どうなってる?高校入試の現状①
熊本の高校入試の現状
最近,熊本の高校入試について質問されることも多く,また,情報も入り乱れている感じもするため,現時点での情報を整理しておこうと思います。大きく分けると,公立高校,私立高校,国立高専がありますが,まず第1弾として,県内の多くの生徒が受験する公立高校入試についての現状をお伝えします。
◆公立高校入試◆
公立高校入試は,大きく分けて県立高校と熊本市立高校の2つの入試がありますが,現状は同一日程で実施されています。2月上旬(2026年は2月2日)に実施される「前期(特色)選抜」と,3月上旬(2026年は3月4日,5日)に実施される「後期(一般)選抜」,体調不良等で「後期(一般)選抜」を受検(公立高校は学力検査を受けるため『受検』,私立高校などでは入学試験を受けるため『受験』と使い分けています)できなかった生徒が受検する「追検査(いわゆる追試,2026年は3月13日に実施)」,募集定員に満たなかった高校・学科・コースで実施される「二次募集(2026年は3月19日)」があります。また,公立高校入試においては,『学区』の概念があり,『学区内』の生徒が極端に不利になることがないよう,『学区外』からの入学者数については制限が設けられているのも特徴です。県立高校の場合,熊本市より北の『県北学区』,熊本市と周辺市町村を中心とする『県央学区』,八代市や人吉・球磨,天草などの『県南学区』に分かれていて,普通科普通コースでは『学区』をまたぐ入学者数には制限が設けられています。ただし,商業や工業・農業などの実業系の学科・コースについては『全県学区』とし,県外からの入学者数に制限が設けられています。『学区外』の入学者数の制限については,高校,学科,コースによって異なります。
《県立高校の学区》
◎県北学区 荒尾市・玉名郡市・山鹿市・菊池市・阿蘇郡市・菊池郡大津町
◎県央学区 熊本市・合志市・宇土市・宇城市・上益城郡・下益城郡・菊池郡菊陽町
◎県南学区 八代郡市・人吉市・水俣市・上天草市・天草郡市・葦北郡・球磨郡
※高校ごとに調整区域が設けられている市町村もあります。
〔例〕阿蘇郡西原村の場合,県北学区の高校の他に,第二高校,東稜高校が学区内扱いとなります。
※普通科普通コース以外の学科・コースは,原則として熊本全県学区。
※熊本市立高校については,熊本市内を学区とする。
【前期(特色)選抜】
基本的に県立高校の普通科普通コース以外で実施される「前期(特色)選抜」は,定員全体の70%以内の範囲で募集され,調査書や面接試験,実技試験,小論文(作文)など,各高校が定める評価基準で合否が判定されます。2025年度入試の例を挙げると,第一高校では普通科英語コースのみの募集で,定員40名のうち10名が募集され,熊本工業高校では10学科全400名の定員のうち,それぞれ20名,計200名が募集されました。このため,競争倍率が高くなる傾向があり,2025年度の前期(特色)選抜で最も競争倍率が高かった第一高校普通科英語コースの場合,85名が受検,競争倍率8.50倍となっています。「前期(特色)選抜」は,学力検査ではなく,生徒の特性や学科・コースの特性にあった生徒を選抜する選抜方法で実施されるのが特徴です。もちろん,ここには部活動やスポーツ,音楽などの実績などを重視する高校・学科も含まれます。
※2026年度入試では,高校・学科・コースにより募集人員が異なる場合があります。
【後期(一般)選抜】
すべての公立高校で実施される「後期(一般)選抜」は,5教科250点満点の学力検査と調査書評定(いわゆる内申書)180点満点を組み合わせて合否を判定する『1次選考』,そこで決まらなかった募集人員の残りを,高校ごとに定めた基準に従って選抜する(いわゆる2次選考)の2段階で行われます。『2次選考』については,学力検査の得点を5倍(1250点)にして,調査書評定180点との合計点1430点の高い生徒から合格が決まる済々黌高校や,基本的に学力検査250点満点の高い生徒から合格が決まり,調査書評定の総計点を参考とする熊本高校のように,多少の違いはあっても学力検査,つまり入試当日の得点を重視する高校がほとんどです。普通科普通コース以外の学科・コースをもつ高校では,これらに加えて,実技試験や面接試験(市立高校および一部の県立高校)を実施するところもあります。また,県立高校が筆記試験による学力検査を行うのに対し,熊本市立高校(必由館高校と千原台高校)の学力検査は,市独自のマークシート形式の問題で行われます。熊本高校や済々黌高校のように,前期(特色)選抜を実施しない高校の場合,ここですべての定員が募集人員となります(両校の場合は各400名)。しかし,前期(特色)選抜を実施する高校の場合は,その合格内定者を除いた人数が募集人員(熊本工業高校の場合,定員の半分の200名)となるほか,玉名高校,宇土高校,八代高校のような中高一貫校の場合,中学からの内部進学者を除いた人数が募集人員となるため,注意が必要です。
【追検査/二次募集】
「追検査」は,コロナ禍にあった2022年度の入試から正式に日程に追加されました。「後期(一般)選抜」を体調不良等で受検できなかった生徒を対象に,中学校を通して申請があった場合のみ受検することができます。また,「二次募集」については,「後期(一般)選抜」終了後,合格者数が定員を満たしていなかった高校・学科・コースにおいて実施されます。2025年度の入試では,受検者が多く,競争倍率が高い熊本市内の県立高校や熊本市立高校を除く,多くの県立高校で実施されています。
◆公立高校入試の改革◆
少子化が進む中,県内の多くの県立高校でいわゆる『定員割れ』が常態化し,実に8割近い高校で二次募集が実施されています(2025年度入試では,県内の県立高校50校のうち,40校が定員割れとなりました)。その一方で,熊本市内の県立高校の多くは1.5倍~2倍近い競争倍率となるなど,熊本市への一極集中が続いています。このまま少子化が進めば,いずれは熊本市内の県立高校でも定員割れする高校が出てくることも予測されるため,熊本県は,今後10年間で50校で62学級程度を削減(熊本市内の11校においても20学級を削減)する方針を示しています。熊本市内の人気校も含む定員削減に対し,不安視する声があるのも事実ですが,定員割れが進んだ場合,学校そのものの教育レベルが低下するという懸念もあります。たとえば,学力検査を実施しない「前期(特色)選抜」からの入学者が大部分で,学力検査を実施する「後期(一般)選抜」の入学者がほとんどいないという状況になった場合,生徒の学力に応じたクラス編成や授業が適正にできるかという不安が生じます。これに対し,県の教育委員会が示したのが,いわゆる「県立高校入試の一本化」です。「前期(特色)選抜」と「後期(一般)選抜」を一本化し,受検生全員が学力検査を受検するというものです。現行の県立高校「後期(一般)選抜」は2日間に渡って行われており,1日目に国語・理科・英語,2日目に社会・数学の学力検査が行われ,一部の高校・学科・コースのみ,2日目の学力検査終了後に実技や面接試験を実施しています。一本化後は,1日目に5教科の学力検査を実施し,2日目にそれぞれの高校が定める独自検査(実技や面接など)を行うというもので,当初2027年度入試からの変更を予定していましたが,9月に当面の間の見送りと現行の入試制度を維持することが決定されました。入試制度の変更は,受検生に与える影響も大きいため,実際に受検する生徒が中学校に入学する年,導入の3年前ぐらいから大枠が示されるため,少なくとも今後2~3年間は現行の制度が続くものと考えられます。
なお,熊本市立の2校については,県立高校入試制度とは別に,現行の前期選抜・後期選抜を継続することが決定しています。
県立・市立高校を含む公立高校の入試制度を含めた改革については,県全体を巻き込むため,仮に決定されたとしても導入まで数年かかる場合がほとんどです。また,その審議過程の多くが,新聞やテレビなどのニュースで報道されますので,今後もしっかりとアンテナを立てておきたいものです。
※次回は,私立高校入試の現状についてお伝えします。





