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【熊ゼミNEWS】どうなってる?高校入試の現状➂

熊ゼミNEWS 2025.11.06

熊本の高校入試の現状➂

これまで熊ゼミNEWSで2回に渡って,熊本の公立高校,私立高校入試についてお伝えしてきました。今回は国立高専の現状と入試情報についてお伝えしたいと思います。

 

◆国立高専入試◆


よく「高専」と言いますが,正式な名称は「高等専門学校」で,中学卒業後の5年間で専門的な技術や知識を習得することを目的とした高等教育機関であり,高校よりは大学に近い学校になります。

全国に51ある国立高専ですが,熊本県にある高専は「国立熊本高等専門学校」の1校のみです。保護者の世代の方たちは「電波高専」「八代高専」の方が聞き覚えがあるかもしれません。「国立熊本高等専門学校」,略して「国立熊本高専」は,「熊本電波高等専門学校」と「八代高等専門学校」が2010年に統合されて誕生した学校になります。ただし,統合後も「電波高専」の施設が「熊本キャンパス」,「八代高専」の施設が「八代キャンパス」として,2キャンパス制をとる形で存続しています。「熊本キャンパス」には,「情報通信エレクトロニクス工学科」「制御情報システム工学科」「人間情報システム工学科」が,「八代キャンパス」には「機械知能システム工学科」「建築社会デザイン工学科」「生物化学システム工学科」が設置され,5年間の本科卒業後は『準学士』の称号が得ることができ,その後は専門知識を生かした企業への就職を中心に,工学部系大学への編入や専攻科へ進む生徒も少なくありません。また,2026年度からは,TSMCの熊本進出などに伴い,熊本で情報技術系の需要が高まっていることを受け,学科改編・改組が行われる予定です。

国立高専の入試は,大きく分けて,定員の40%(熊本キャンパスの設置学科)~50%(八代キャンパスの設置学科)程度を募集人員として1月中旬に実施される「推薦選抜(2026年は1月17日)」,定員の残りを募集人員として2月上旬に実施される「学力選抜(2026年は2月8日)」の2つがあります。「推薦選抜」は,その名の通り中学校の校長先生の推薦状が必要であり,合格時には必ず入学することが条件となります。一方,「学力選抜」は,いわゆる私立高校の「一般入試」に近いもので,合格時の入学義務はありません(と言っても,ここで受験する生徒の大部分は第一志望校なので,実際には入学する生徒がほとんどですが)。では,実際に,それぞれの入試の内容について見ていきましょう。

 

【推薦選抜】

「推薦選抜」は,私立高校の「専願入試」とは異なり,だれでも受験できるわけではありません。中学校の校長先生の推薦状が必要になるため,成績に関する条件があります。目安として,3年間の通知表の評定平均が3.0以上あることが,出願資格と考えてよいでしょう。「推薦選抜」では学力試験が行われず,「調査書(135点)」「特別活動(10点)」「面接(60点)」の205点満点で,合否が判断されます。「調査書」の評定は,通知表をもとに作成されるもので,「特別活動」とは,推薦状に記載される内容が対象で,生徒会活動や部活動の成果や,英検などの資格取得については評価が高くなると言えます。「面接」についても,受験生であればある程度練習して受けるため,極端な差はつきにくいと考えられます。もう気づきましたよね!ここで一番のポイントになるのは,「調査書」の割合の高さです。

「調査書」の内容を見ることはできませんが,通知表の評定をもとに作成されるため,そう大きくは変わらないと考えてよいでしょう。「国立熊本高専」では,中学2年生での調査書評定を5段階×9教科の45点満点,中学3年生での調査書評定は2倍(中3での成績を重視)にして,5段階×9教科×2倍=90点満点として,合計135点満点で評価することが募集要項等に明記されています。ここでは,みなさんがイメージしやすいように,中学2年生の通知表評定=5段階×9教科=45点満点,中学3年生の通知表評定=5段階×9教科×2倍=90点満点の合計135点満点として説明します(実際には,中学3年生の評定は2倍にして評価されます)。

◎通知表評定が2年間オール3だったAくん

3×9教科+3×9教科×2倍=81点

◎通知表評定が3年間オール4だったBさん

4×9教科+4×9教科×2倍=108点

この2人を比較すると,入試を受ける前の時点で,「調査書(135点満点)」の差が27点あることがわかります。AくんがBさんを逆転するためには,「特別活動(10点満点)」と「面接(60点満点)」の合計70点満点で,Bさんを28点以上上回らなければならないことになります。こう考えると,通知表の差の影響がいかに大きいかがわかると思います。つまり,通知表の評定平均が3.0以上あれば出願資格を得ることはできても,実際に合格するために必要な通知表平均は,もっと高いと考えたほうがよいということになります(年によっても変わりますが,4.0~4.2以上を目安と考えてください。もちろん,「特別活動(10点満点)」と「面接(60点満点)」の評価が満点近い場合もありますので,通知表の平均が目安に届いていないから絶対に無理というわけではありません)。

2025年度の「推薦選抜」では,熊本キャンパス設置の3学科で競争倍率2.4~2.5倍,八代キャンパスの3学科で1.3~1.9倍となっています。

 

【学力選抜】

「国立熊本高専」の「学力選抜」は,私立高校の「一般入試」,公立高校の「後期(一般)選抜」にあたる入試で,「学力選抜」と異なり「調査書」評定の出願条件等はありません。ただし,学校の特性もあり,5教科の学力試験については以下のような傾斜配点が行われています。

◎数学・理科〔各150点〕

◎英語・国語・社会〔各100点〕

◎調査書〔135点〕 ※評定の内容は「学力選抜」と同じ

これらの合計735点満点の得点で合否が判断されるわけですが,理数系に強い,調査書評定が高い生徒とって有利にあんる内容になっています。また,実際に入試問題を見てみるとわかる(ホームページ等で公開されています)と思いますが,数学や理科の問題については,公立高校後期選抜の入試問題と比較してもかなり難しい問題が多く見られます。5教科では合格ラインに達していたとしても,理数系,特に数学に関してはしっかりとした応用力を身につけて受験に臨む必要があります。

2025年度の「学力選抜」では,熊本キャンパス設置の3学科で競争倍率1.4~1.9倍,八代キャンパスの3学科で1.6~2.1倍となっています。

 

◆国立熊本高専入試の現状◆


工業系の高校よりさらに専門的な知識を学ぶ学校の特性上,情報技術系に関心があり,「国立熊本高専」を第一志望とする受験生が大半を占めています。このため,「推薦選抜」「学力選抜」ともに,1.5~2.5倍程度の高い競争倍率となっているのが特徴です。県内で半導体を中心とした情報通信,情報技術系の技術職のニーズが高まっていることもあり,この傾向は当面続くものと考えられます。これを受け,「国立熊本高専」では2026年度から学科改編・改組が予定されています。

「熊本キャンパス」では,情報技術を開発できる人材を育てることを目標に,これまでの3学科を廃止し,新たに3学科が設置され,定員も各40名から各43名へと増員されます。

《熊本キャンパス》

◎旧学科

情報通信エレクトロニクス工学科〔40名〕

制御情報システム工学科〔40名〕

人間情報システム工学科〔40名〕

◎新学科

電子情報通信工学科〔43名〕

知能制御情報工学科〔43名〕

情報工学科〔43名〕

「八代キャンパス」では,情報技術を駆使する人材を育てることを目標に,新たに「情報コース」が設置されます。

《八代キャンパス》

機械知能システム工学科〔40名〕→機械知能コース〔33名〕・機械知能情報コース〔7名〕

建築社会デザイン工学科〔40名〕→建築土木コース〔33名〕・建築社会情報コース〔7名〕

生物化学システム工学科〔40名〕→生物工学コース〔33名〕・生物化学情報コース〔7名〕

 

◆隣県も含めた高専進学について◆


熊本県内にある高専は「国立熊本高専」だけですが,県北を中心に,お隣の福岡県大牟田市にある「国立有明工業高等専門学校」,通称「有明工専」に通う生徒も少なくありません。「有明工専」は「創造工学科」の1学科のみで,入学後1年半の共通教育期間で学ぶ間に自分の適性を考え,2年生後半から「エネルギーコース」「応用化学コース」「環境生命コース」「メカニクスコース」「情報システムコース」「建築コース」の6コースに分かれて専門性を深めるというスタイルをとっています。全国に51ある国立高専は,社会が必要とする技術者を養成することを目標に設置されていて,それぞれ特徴のある学科・コースが設置されています。

話を「国立熊本高専」に戻しますが,IT系企業の技術職としても通用する知識が身につくことから,将来の就職に有利になると考えて,受験する人もいるようです。しかし,「理数系が得意」あるいは「理数系が好き」というのでなければ,あまりお勧めできません。これは他の高専も同じなのですが,入学後,理数系の教科・科目の割合が高く,かつ専門的な内容も多くなるためです。高校での勉強をしていく中で文系・理系を選択し,卒業後の進路を決める普通科と異なり,高専の場合には入学後の大幅な進路変更ができません。ある程度理数系が得意で,将来は情報技術系を中心とした職業に就きたいと考えている人にとってこそ,最高の学習環境といえるでしょう。今回の熊ゼミNEWSを見て,高専に興味をもった中学生の方がいれば,ホームページなどで,どんな学校で,どんなことを学び,どんな進路に進むのか,まずはそういった先のことまで考えてみるとよいでしょう。

 

※次回の熊ゼミNEWSでは,「熊本の高校入試の現状④」として,通信制高校についてお伝えしたいと思います。

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