【熊ゼミNEWS】どうなってる?高校入試の現状②
熊本の高校入試の現状②
前回の熊ゼミNEWSでは,熊本の公立高校入試についてお伝えしました。今回の熊ゼミNEWSでは,私立高校の現状と入試に関する情報について,最新の情報も交えてお伝えしたいと思います。
ひと言で私立高校といっても,みなさんご存じの全日制高校もあれば,単位制・通信制高校もあります。内容も入試の仕組みも大きく異なるため,今回は,中3卒業生の4割近くが進学する全日制の私立高校についてお話しします。
◆私立高校入試◆
熊本県内には,全部で21校の全日制私立高校があります(「えっ!そんなにあるの!」と驚かれる方も多いかもしれません)。最も人口が多い熊本市内に,その3分の2にあたる14校が集まっています(※詳しくは,この熊ゼミホームページの『熊本県内 学校リンク』からご覧ください)。
私立高校の入試は,大きく分けて,1月中下旬に実施される「専願(推薦)生入試(2026年は1月21日)」,これと同日に実施される「奨学(特待)生入試」,2月中旬に実施される「一般生入試(2026年は2月12日または13日)」があります(※県北の一部の高校では,入試日程が異なります)。「専願(推薦)生入試」は,その私立高校を第一志望とする生徒が受験するもので,合格時には入学義務がある代わりに,一般に他の入試に比べて合格しやすいのが特徴です(「専願」と「推薦」の違いは,中学校長の推薦状の有無で呼称が異なります)。入試の内容についても,筆記試験が5教科の高校・学科もあれば,3教科の高校・学科もあり,また,面接試験や実技試験を実施する学科・コースもあるなど,高校により異なっています。「奨学(特待)生入試」は,入学義務がなく,合格時に入学金や授業料の減免などの特典が得られる入試です(※特典については,高校によりかなり違いがあるので,興味がある方は各高校のホームページなどをご覧ください)。2日間に渡って行われる「一般入試」は,県内の私立高校を2グループに分けて実施され,受験生は2校まで受験することが可能です。以前はこの「一般入試」が主流でしたが,私立高校に進学する生徒の割合が増えつつある近年,一部にはかなり難化している高校もあります。
【専願(推薦)入試】
「専願(推薦)生入試」は,その私立高校を第一志望とする生徒が受験するもので,合格時には入学義務がある代わりに,一般に他の入試に比べて合格しやすいのが特徴です(「専願」と「推薦」の違いは,主に中学校長の推薦状が必要かどうかで呼称が異なります)。入試の内容についても,筆記試験が5教科の高校・学科もあれば,3教科の高校・学科もあり,また,面接試験や実技試験を実施する学科・コースもあるなど,高校により異なっています。「合格したら絶対入学します!」という生徒たちが受験しているのですから,学校側としても,できるだけ合格してほしいわけです。定員全体の半分以上,高校によっては定員の7割近くを「専願(推薦)入試」の合格者が占めるというのも珍しくありません。
【奨学(特待)入試】
「奨学(特待)生入試」は,入学義務がなく,合格時に入学金や授業料の減免などの特典が得られる入試です(「奨学」と「特待」の違いは高校による呼称の違いで,受験生から見た場合はほとんど変わりません)。単なる合格,不合格だけでなく,奨学A合格ならば入学金・授業料全額免除(または該当額の奨学金を支給),奨学B合格ならば入学金免除および授業料半額免除,奨学C合格ならば入学金のみ全額免除など,入試の得点により得られる特典ランクを複数設けている高校がほとんどです。合格時の入学義務がないこともあり,公立高校を第一志望とする生徒も含め,私立高校受験の主流として多くの生徒が受験しています(※特典については,高校によりかなり違いがあるので,興味がある方は各高校のホームページなどをご覧ください)。
先ほど説明した「専願(推薦)入試」と同一日程,同一問題で実施する高校が多く,「専願(推薦)入試」の受験生であっても,奨学(特待)の合格点を超えていた場合,奨学生としての特典を与えるところもあります。
【一般入試】
2日間に渡って行われる「一般入試」は,県内の私立高校を2グループに分けて実施され,受験生は2校まで受験することが可能です。以前はこの「一般入試」が主流でしたが,私立高校に進学する生徒の割合が増えつつある近年,一部にはかなり難化している高校もあります。ここ数年を見てみると,実質競争倍率が2倍を超えるところも珍しくなく,時には4倍から5倍近い倍率になる高校もあります。こうした状況もあり,名称は「一般入試」であっても,「専願(推薦)入試」,場合によっては「奨学(特待)入試」よりも狭き門となる可能性もあるため,(少なくとも学習塾や学校の先生からは)積極的には勧めづらいのが近年の傾向です。
◆私立高校入試の現状◆
「私立高校人気」という言葉をときどき耳にしますが,ここ数年の私立高校受験者数や入学者数を見てみても,さほど大きな変化はありません。実際には,公立高校の受検者数がやや減少しているため,私立高校に進学する生徒の割合が増えていることと,私立高校を第一志望とする「専願(推薦)入試」の受験者数が増えていることがその背景にあるようです。前回の公立高校編でもお話ししましたが,いわゆる熊本市内への一極集中は,公立高校だけでなく,14校の私立高校も含む傾向として強まっているのです。その結果,先ほどの入試区分ごとのところで述べたように,「一般入試」が極端に難しくなるといったことが起きているのです。この背景には,次にあげる3つのことが影響していると考えられます。まず1つ目は「私学助成金」です。県や市が建物の管理や整備をする公立高校と異なり,私立高校は学校自身がその費用を負担しなければなりません。教育の質を維持し,健全な学校運営を継続するための補助として,国や県が交付しているのが「私学助成金」です。定員を大幅に超える入学者があった場合には,その高校に対する「私学助成金」がカットされるなどのペナルティーがあるのです。2つ目は,生徒たちが勉強する教室のサイズの問題です。保護者の方たちが高校生だった時代,1980年代は1クラス50名,1990年代では1クラス45名というのが一般的でした。現在は,公立高校の1クラスの生徒数は40名を標準とすると定められていて,これが募集定員のもとになっています(熊本高校や済々黌高校,熊本工業高校などは10クラス400名が定員,ただし,実際には定員を若干超える人数が合格し,41名となるクラスもあります)。また,中学校では,2026年度から1クラス35名以下,小学校では今年度から1クラス35名以下とする取り組みがすでに始まっています。文部科学省は,時代に合わせたきめ細やかな指導を行うことを目的に,段階的に少人数化を進めてきたのです。私立高校の中には,校舎を建て替える際,将来を見越して,40名以下で使用することを前提に教室のサイズを設計しているところも多く,こうした学校では,定員を超過した場合,教室に入れない生徒が出てきます(もちろん,教室のサイズが大きければ,公立高校と同様に41人クラス,42クラス…とすることで解決します)。つまり,入学者が定員を超過する=クラスを1クラス増設するしかないわけです。こうなると大変です。クラス数が増えるということは,その授業を担当する先生も増やさなければならないからです。高校の授業は,教科・科目によって担当の先生が異なるのがほとんどです。これが3つ目,授業を担当する先生が不足するという問題です。
私立高校としては,できるだけ多くの生徒に入学してほしいのですが,定員は大きく超えてしまった場合のデメリットを考えると,なんとか定員内に収まるようにしなければなりません。1月に実施される「専願(推薦)入試」「奨学(特待)入試」からの入学者が多ければ,2月に実施される「一般入試」は厳しくせざるをえないのです。
そして,今後,私立高校の受験者数がさらに増えるかもしれない「カギ」となるのが,私立高校に対する就学支援金の拡充,いわゆる「私立高校授業料の実質無償化」です。
◆私立高校授業料の実質無償化◆
まず,誤解をしている方も多いと思うので,先にはっきりと言っておくと,2025年10月30日現在,「私立高校授業料の実質無償化」はまだ正式に決定していません。その理由は後から述べるとして,まずはその内容から話していきたいと思います。
高校の授業料に対する国の補助=就学支援金については,現在,年収910万円未満の世帯に対し年額11万8800円(月額9900円),年収590万円未満の世帯に対しては,年額39万6000円(月額33000円)が支給されています。前者は公立高校の授業料とほぼ同額で,後者は私立高校の授業料の平均に近いものです。ただし,実際の校納金には,授業料以外に,教育充実費や施設維持管理費,修学旅行の積立金や同窓会費などがあります。これについては,公立高校も私立高校も同じなのですが,全国平均で見ると,公立高校とは違い,自校で賄わなければならない私立高校の方が5000円程度高くなるのが一般的なようです。高校進学率が98.7%と,ほとんどの中学卒業生が高校に進学する日本において,教育の平等化という観点から,東京都や大阪府などの大きな自治体では,独自の補助金を出すことでこの差を埋めています。これを国が行うことで,公立高校に通う世帯の実質負担と私立高校に通う世帯の実質負担を同程度にしようというのが,いわゆる「私立高校授業料の実質無償化」です。第一段階として,所得制限をなくし,年額11万8800円(月額9900円)の一律支給が2025年からスタートしています。そして,第2段階として,私立高校授業料の全国平均,年額45万7000円(月額約38000円)まで引き上げることが2026年度から予定されています。この変更には国会で審議,可決される必要があるため,現時点(2025年10月30日時点)ではあくまでも予定の段階です。しかし,まさに昨日(10月29日),2026年度からの導入に向け,3党(自由民主党・日本維新の会・公明党)による制度作りを進めていく合意がなされました。現中学3年生のみなさんとその保護者の方々にとっては,公立・私立にかかわらず,学費の負担が軽減されることになるため,朗報と言えるでしょう。国会審議を経て,可決されるまでは「絶対」はありませんので,今後もニュースに注目しておきたいものです。
そして最後に,この「私立高校授業料の実質無償化」が現実となった場合,各私立高校の「奨学(特待)制度」についても大きく変わっていくと考えられます。先ほど,「奨学(特待)入試」のところで述べた,『授業料全額免除』や『授業料半額免除』などの特典が事実上意味をなさなくなるためです。私立高校の多くは,各学校のホームページなどで募集要項等,入試に関する最新情報を公開していますので,定期的にチェックするとよいかもしれません。
※次回の熊ゼミNEWSでは,「熊本の高校入試の現状➂」として,国立高専についてお伝えしたいと思います。





