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【熊ゼミNEWS】熊本県立高校の学級削減とその影響

熊ゼミNEWS 2025.12.25

熊本県立高校の学級削減


12月2日,熊本県教育委員会は,現在の中学2年生が受験する2027年度の高校入試で,済々黌高校,第一高校,熊本西高校,東稜高校,大津高校の募集定員をそれぞれ1クラス40人減らすことを発表しました。また,現在の中学1年生が受験する2028年度の高校入試では,熊本高校,第二高校,熊本北高校,玉名高校,人吉高校で,同様に募集定員をそれぞれ1クラス40人減らすことも合わせて発表されました。今回の熊ゼミNEWSでは,この「県立高校の学級削減」の内容と,今後考えられる影響について考えてみたいと思います。

 

熊本県の少子化の現状


1989年(平成元年)に2万8,759人いた熊本県の中学校卒業者数は,2007年には2万人を切り1万9,616人となりました。2020年には1万6,156人まで減少したものの,ここ数年は1万6,000人台で推移し,一時的に下げ止まりしています。しかし,2027年からは再び減少に転じ,このまま変わりなければ2032年には1万4,881人,2038年には1万1,504人まで減少すると推計されています。

中学卒業予定者数 2026年 2030年 2034年
県央学区(旧熊本学区) 8,819人 8,578人 7,646人
県央学区(旧宇上学区) 1,473人 1,339人 1,147人
県北学区 3,040人 2,982人 2,486人
県南学区 3,080人 2,810人 2,181人

熊本県の県立高校の学区は,大きく「県北学区」「県央学区」「県南学区」の3つに分かれています。2026年から2034年までの中学卒業予定者数の推移を表した上の表を見ていただくとわかる通り,熊本市(旧熊本学区)の減少数が最も多く-1,173人となっています(減少率で言えば,旧熊本学区で-13.3%,宇土市・宇城市と上・下益城郡からなる旧宇上学区が-22.1%,県北学区が18.2%,県南学区で-29.2%と,熊本市以外の減少率の方が高いのですが・・・)。令和7年度の県立高校後期選抜で見た場合,県立高校全47校のうち,最終的な受検者数が定員割れしなかったのは11校,うち熊本市内が9校という結果でした。

おそらく,こう書いてくると「どうして受検者が多い熊本市の高校から減らすの?」と思う人も多いのではないでしょうか。最大の理由は,学級を減らす学校の規模の問題です。熊本高校や済々黌高校は,普通科だけで1学年10クラス,定員は400名となっていて,普通科だけではないものの,第二高校,熊本工業高校も10クラス,定員400名となっています。これに続く,9クラス定員360名となっているのが,第一高校,熊本西高校,熊本北高校,東稜高校,熊本商業高校です。もう気づいたと思いますが,すべて熊本市内にある県立高校です。少子化が先に進行している地域では,すでに統廃合や学級削減が行われていて,クラス数も定員も少なくなっている高校が大半です。また,普通科以外の学科やコースについては,そもそも設置が1クラスしかない高校も多く,削減すれば消滅することになってしまいます。こうしたことから,まずは普通科の学級数が多い高校から1クラス40名を削減することになったと考えられます。

では,すでに定員割れが続いている高校についてはどうなるのでしょうか? 大津高校(1学年8クラス)や玉名高校,人吉高校(各1学年7クラス)のように,普通科系の学級数が多い高校はすでに予定に組み込まれていますが,他の高校については2028年度以降実施するとされています。学級数が少ない高校では,学級の削減が高校を存続させるかどうかという議論に及ぶ場合もあるからです。「1学年1クラス40人でもいいじゃないか」と思う人もいるかもしれませんが,一人の先生が複数科目を指導する小学校とは異なり,指導する科目により先生が異なる高校では,必要な科目分の先生を確保する必要があります。これに対し,熊本県では,2024年に「県立高等学校あり方検討会」を設置し,少子化や社会情勢に沿った適性な学級削減を検討するとともに,単なる規模縮小ではなく,存続するための魅力ある学校づくりに向けた提言をおこなっています。地元の市町村と連携を深める「地域魅力化特例校」には,矢部高校や球磨中央高校,天草拓心高校,人吉高校などがあります。また,地元自治体に加え,企業とも連携した取り組みとして,高森高校のマンガ学科があり,お父さん世代にはなじみ深い「少年ジャンプ」を発行する集英社の協力により,全国から入学希望者が集まる人気校となっています。

 

これからの展望


それでは今後,どういった影響が考えられるのでしょうか? まず,少子化が一気に進んでいくことに間違いはありません。「県立高校あり方検討会」は,今後10年間で62学級を削減するよう提言しています。もっとも人口が多い熊本市においても,10年後の中学卒業者数は1,100人程度減ることが見込まれており,熊本市内の県立高校においても20学級の削減を提示しています。熊本市内には,私立高校14校のほか,熊本市立の必由館高校と千原台高校があります。2025年12月現在,政府で検討されている,私立高校に通う生徒に対する就学支援金の拡充と所得制限の撤廃,いわゆる「私立高校授業料の実質無償化」が実現すれば,熊本市内の私立高校を中心に,私立志向が強まるものと考えられます。現時点でも一般入試の倍率が2倍,ときには4倍を超える高校もあり,かなり難易度が上がる高校が出てくることも考えられます。全国に先駆けて私立高校の授業料無償化に踏み切った大阪府では,私立人気が高まり,2023年度で公立高校全体の27%だった定員割れの高校が,2025年度入試では51%と半数を超えたほか,公立上位校である寝屋川高校も定員割れするなど,大きな変化が起きています。私立高校でも,専願受験生の割合が過去最高の35%に達するなど,大都市と地方都市の差はあっても,熊本でもこれに近いような状況が起こることは十分考えられます。また,熊本市立の2校についても,2025年度の後期選抜の競争倍率が必由館高校2.01倍,千原台高校1.82倍と非常に高く,これがさらに上がることも考えられます。もちろん,市立の2校も,私立高校も,将来的には少子化の影響を受けることになるため,どこかで定員削減という話が出てくる可能性は高いと考えられます。

こう話してくると,なんだか厳しい話ばかりになってきたので,最後にちょっとプラス思考で考えてみましょう。

まず,県立高校については,先ほど述べたように,地域や企業と連携した取り組みが進んでいます。水俣高校の半導体情報科のような,熊本で必要とされる人材育成につながるような学科やコースも増えてくるでしょう。これは私立高校についても言えることで,開新高校の半導体工学科や,東海大学付属熊本星翔高校のアカデミックサイエンスクラスのような,大学と連携した取り組みも始まっています。また,将来的には大学に進学する生徒も減少することが見込まれることから,私立大学を中心に,高校と連携し,指定校推薦を増やす動きも出てきています。「私立はお金がかかるから,公立に行きなさい。」 こう言われたことがあるお父さん,お母さんもたくさんいると思います。私立高校の授業料無償化が実現すれば,多くの子どもたちが,本当に行きたい高校,本当に学びたいことが学べる高校を選ぶことができるようになります。

これから数年は,大きな変化が続くでしょう。教育や進学に関する情報も,目まぐるしく変わっていきます。もうすぐやってくる2026年も,「熊ゼミNEWS」では,そうした情報を少しでもわかりやすく紹介していきたいと思います。

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